カレンダーを観察したら
今年の4月からは、4年の任期満了で退任されたIさんの後継として、私が郵政公社の総裁も兼務することになり、動きがとりやすくなったこともあって、問題はほぼ決着しました。
実際の買上げは今年9月いっぱいで終了させる。
どうしても売らないということで買上げができないところについては賃貸借契約を打ち切って、補償するということになっています。
解決のカギは信頼関係です。
私は、郵政の内部に入り、特定郵便局長を中心とする郵便局のネットワークが民営化の成否の重要な鍵を握っていると感じていましたし、彼らの現場力を信頼し、また期待していました。
ことあるごとに、そのことを訴えてきたら、当時の全特会長の高橋さんも、「Nさんが言うのだから、君たちも言うこと聞けよ」と言ってくれるようになりました。
話し合いができるようになったベースにあるのは、信頼関係以外の何ものでもありません。
ましてや、特定局側に有利な条件を出したわけでは決してない。
このようにして、双方にとってリーズナブルな解決が可能になったのです。
かくして郵便局改革はようやく動き出しました。
今後は、従来の業務推進連絡会・部会を廃止し、中間組織として、地区グループ、地域グループを設置します。
地区グループは帥局から別局程度の郵便局で構成し、地域グループは4程度の地区グループで構成します。
郵便局に対する人事権と指揮命令権は、もちろん支社にあります。
支社がきちっと人事権を持ち、各郵便局に直接、いろいろな通達を出したりします。
ただし、過去を見ていくと、通達を出すほうにも多分に問題がありました。
さきほど、通達の資料が膨大であるというお話をしましたが、2人や3人しか局員がいない郵便局に山のように通達が来ても、現場としては対応のしようがありません。
そのほかにも、現場の窓口の実情を無視したような通達が少なくなかった。
その結果、郵便局が勝手に自分たち流のやり方をするとか、あるいは支社がまた別の通達を出すとか、そういったことが起こり、指揮命令系統に混乱が生じてしまった。
支社なり本社なりが、ほんとうに郵便局の実情を把握しているのかどうかが問われる問題です。
受けるほうの実情を十分に把握して、通達を出さなければいけない。
この点は抜本的に正していかなければいけません。
これと近いことは銀行にもありました。
通達を出すのが自分たちの仕事だと思い込んでいる本部の人間がいて、私はよく「いい加減にしろ」と怒ったものです。
「もう通達を制限する」と言ったこともある。
それでも銀行はまだいいのです。
少ない場合でも、支店の人員は、4人程度はいます。
支店長もいるし、副支店長もいる。
課長もいる。
組織としては整っているので、通達で示されたことを消化し切れないということはありません。
郵便局の場合は事情が違います。
通達が消化されないまま、文字どおり山のように郵便局に積み上がっていってしまいます。
そのうえ、これまでの特定局長は、部会やら、連絡会やら、いろいろな名目で会議が多く、郵便局を留守にすることがしばしばあった。
これではいけません。
もちろん、必要な会議はしなければいけないけれど、これも極力減らしていくというのが、今後の方針です。
また、郵便局長の採用問題でも、息子さんや甥御さんなど血縁の人を特に優遇するということのないように、今後は、局長たる能力があるかどうかを、きちんと支社・本社の人事が判定していくことになります。
モチベーション向上を求めて何が悪いのか改革が後退したという批判は、地区グループ・地域グループを従来の全特の部会・連絡会にオーバーラップさせていることによるようですが、お話ししてきたように、仕組みも機能も従来のものとはまったく異なります。
うとしている」というような悪口も耳に入ってきます。
非常に腹立たしいことです。
これは批判などではなく「口害」です。
地区グループをつくったのは、あくまで、小さい局間の協力を可能にするためです。
たとえば、多くの小さい郵便局では、投資信託の販売ができません。
地区グループや地域グループを利用すれば、販売できるところをハブ店、できない店をそのスポーク店とする、ハブ・アンド・スポーク体制ができます。
スポーク店の郵便局は投資信託を望むお客さんをハブ店の郵便局に紹介するわけです。
局長の定年問題については、公社案のときと同じ、一律帥歳に引き下げますが、5年程度の移行期間を設け、段階的に実施していくことにしています。
もちろん、スポーク店ができるのは「投資信託に関心がおありになればご紹介します」ということだけです。
商品説明はできないし、もちろん「買ってください」と勧誘することもできません。
その点は、コンプライアンスを厳密に徹底します。
このような紹介実績も業績評価としてカウントするようにすれば、少人数の郵便局もやる気を出してくれます。
民営化を成功させるためには、やはりいいところは率直に認めて、高いモチベーションの下で仕事をしてもらわなくてはなりません。
経営者や幹部が社員の批判ばかりしていて、いい成果が上がるはずがない。
このビジネスの鉄則を否定するような浅薄な批判は、迷惑以外の何ものでもありません。
人減らしだけがリストラではない現在、郵政公社には約別万人の正規職員がいます。
民営化をしたら手っ取り早く収益を上げるために人員削減をするのではないか、また民営化する以上、人を減らして組織をスリム化すべきだという声もありますが、どちらも現状を正しく理解いただいたうえでの意見とは思えません。
郵政民営化関連法案と併せて採択された附帯決議には「現行の労働条件及び処遇が将来的にも低下することなく職員の勤労意欲が高まるよう十分配慮すること」と明記されており、これを守っていくことが民営化の前提となります。
実は郵政公社では、2003年の発足後一貫して、正規職員の数を減らし、「ゆうメイト」という非正規職員を増やしてきました。
これによりたしかに人件費は減り、決算上の収益構造は改善したのですが、同時に、現場業務のクオリティが低下してしまったことは否めません。
ここ数年問題になっている年賀状の遅配も、いくつもの要因が複合的に絡み合って生じているのですが、その一つの原因は、現場での人員不足にあります。
民営化が正式に決まってからは、「これから新しいシステムに慣れるのは難しい」ということで、現場のベテラン職員を中心に、年間数千人単位の大量退職が発生しています。
また、4事業会社に分社化されれば、それぞれの会社が自前で総務・経理などの部門を持たなければならず、当然、それに応じた間接部門の増員が必要になります。
そのため、どこの郵便局に行っても、支社に行っても、まず必ず出てくる質問は、「今後の人員確保はどうするのですか」ということなのです。
景気回復と団塊世代の大量退職に伴い、民間企業はどこも人材確保に必死になっています。
状況は郵政も同じで、とても人減らしどころではない。
私は「新卒で志望した人は全員採れ」と言っているほどです。
もちろん、郵便事業のIT化を進めることなどにより、将来的には、今より少ない人員で、よりクオリティの高い業務を行なうことを目指してはいます。
現状のシステムはとてもそのレベルまでは達していません。
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